奥歯が抜けたままでも大丈夫?放置するとどうなる?治療が必要な理由を解説
奥歯が抜けたものの、痛みもなく、食事にもそれほど困っていない。
そのような状態だと、
「奥歯1本くらいなら、抜けたままでも大丈夫なのでは?」「見えない場所だから、このままでもいいかな」「もう何年も経っているけれど、今さら治療する必要はある?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、基本的には奥歯が抜けた状態をそのままにしておくことはおすすめできません。
奥歯が1本なくなっても、すぐに大きな問題が起こるとは限りません。そのため「特に困っていない」と感じやすいのですが、時間が経つにつれて周囲の歯が動いたり、噛み合わせが変化したりすることがあります。
さらに長期間経過すると、抜けた部分の顎の骨が痩せ、いざ治療しようと思ったときに治療が複雑になる可能性もあります。
この記事では、奥歯が抜けたままでも大丈夫なのか、放置すると何が起こるのか、そして抜けた奥歯を補う治療方法について詳しく解説します。
結論|奥歯が抜けたままにするのはおすすめできません
奥歯が1本抜けても、すぐに食事ができなくなるわけではありません。反対側の歯で噛むこともできますし、前歯やほかの奥歯が残っていれば、普段の生活ではそれほど不自由を感じないこともあります。ここが、奥歯の欠損を放置してしまいやすい理由の一つです。
しかし、お口の中では上下左右の歯がそれぞれ支え合いながら、噛み合わせを維持しています。
そのため、たった1本であっても歯を失うと、それまで保たれていたバランスが少しずつ変わっていきます。
特に注意したいのが、歯の移動と顎の骨の変化です。
抜けた場所へ隣の歯が傾いたり、噛み合っていた歯が伸びてきたりすることがあります。また、歯を失った部分では顎の骨が徐々に痩せていくこともあります。
痛みがないからといって、お口の中に変化が起きていないとは限りません。
奥歯が抜けたままだとどうなる?考えられる6つの影響
1.隣の歯が抜けた場所へ傾いてくる
歯は顎の骨に固定されていますが、まったく動かないわけではありません。
奥歯が抜けてスペースができると、その隙間に向かって隣の歯が少しずつ傾いてくることがあります。歯が傾くと、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったり、歯ブラシが届きにくくなったりします。
その結果、虫歯や歯周病のリスクが高くなることもあります。
さらに傾きが大きくなると、将来ブリッジやインプラントなどで奥歯を補おうとしても、人工歯を入れるためのスペースが不足し、追加の治療が必要になる場合があります。
2.噛み合っていた歯が伸びてくる
下の奥歯が抜けた場合、その歯と噛み合っていた上の奥歯にも変化が起こることがあります。噛み合う相手を失った歯が、空いたスペースに向かって少しずつ移動してくるためです。これを「挺出(ていしゅつ)」といいます。
反対に上の奥歯を失った場合には、下の歯が上方向へ移動してくることがあります。一度大きく移動した歯が自然に元の位置へ戻ることは期待できません。
そのため、放置期間が長くなるほど噛み合わせが変化し、その後の治療が複雑になる可能性があります。
3.ほかの歯に負担がかかる
奥歯には、食べ物をすりつぶし、噛む力を受け止める重要な役割があります。
1本なくなると、それまで複数の歯で受け止めていた力を、残っている歯で負担することになります。
特に起こりやすいのが、奥歯のない側を避けて反対側ばかりで噛むことです。
本人は意識していなくても、噛みやすい側を使うようになり、片側の歯へ負担が集中していることがあります。残っている歯を長く使うためにも、抜けた歯だけではなく、お口全体の噛み合わせを考えることが大切です。
4.噛み合わせが変わってくる
隣の歯が傾く、反対側の歯が伸びる、片側ばかりで噛む。
こうした変化が重なると、お口全体の噛み合わせにも影響することがあります。
最初は、「以前より噛みにくい」「片方ばかり使っている気がする」「食べ物が挟まりやすくなった」といった小さな変化かもしれません。
ところが、その状態が長く続けば、一部の歯だけに強い力がかかるなど、噛み合わせのバランスが崩れていく可能性があります。
5.顎の骨が少しずつ痩せていく
歯がなくなった場所では、顎の骨にも変化が起こります。
歯を支えている「歯槽骨」は、歯を失うと徐々に吸収され、高さや幅が減っていくことがあります。
これは痛みを伴って進むとは限りません。
そのため、自分では何も変わっていないように感じていても、レントゲンやCTで確認すると、抜歯直後より骨が少なくなっていることがあります。
特に将来インプラントを考えている場合、骨の量は重要です。
骨が不足している場合には、インプラント治療の前や同時に、骨を補う「骨造成」が必要になることがあります。
6.将来の治療が複雑になることがある
奥歯が抜けた直後と、何年も経過した状態では、お口の中の条件が同じとは限りません。
長期間放置すると、
- 隣の歯が傾いている
- 噛み合う歯が伸びている
- 顎の骨が痩せている
- 噛み合わせが変化している
といった問題が重なっている場合があります。
その結果、抜けた直後であれば比較的進めやすかった治療でも、歯の位置や骨の状態を整える処置が必要になることがあります。
「いつか治療すればいい」と考えるより、まず現在の状態だけでも確認しておくことが大切です。
奥歯1本だけなら抜けたままでも大丈夫?
「ほかの歯がたくさん残っているから、1本くらいなくても大丈夫」と思われるかもしれません。確かに、奥歯を1本失ったからといって、その日から食事ができなくなるわけではありません。
しかし、問題は抜けた1本だけではなく、周囲の歯への影響です。
歯が抜けたスペースをそのままにしていると、隣の歯や噛み合う歯が少しずつ移動する可能性があります。
また、残っている奥歯にこれまで以上の噛む力がかかることもあります。
そのため「1本だから治療しなくても大丈夫」とは一概にはいえません。
ただし、お口の状態によっては、欠損部をすぐに補わず経過をみる判断がなされるケースもあります。
治療が必要かどうかは、抜けた歯の場所や残っている歯、噛み合わせなどを確認したうえで判断する必要があります。
一番奥の歯が抜けた場合も治療した方がいい?
一番奥の歯は、その後ろに歯がありません。そのため、「隣の歯に挟まれている場所ではないから、そのままでいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、一番奥の歯であっても、噛み合う相手の歯がある場合には、その歯が挺出する可能性があります。
また、一番奥の歯を失うことで、その手前の歯へ噛む力が集中することも考えられます。一方で、親知らずなのか第二大臼歯なのか、反対側の歯が残っているのかなどによって治療の必要性は異なります。
一番奥だから必ず治療する、あるいは一番奥だから治療しなくてよい、と単純に判断することはできません。
奥歯が抜けたまま1年・2年・何年も経っていても治療できる?
「もう2年以上放置しているから、今さら治療できないのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。しかし、長期間経過しているからといって、それだけで治療できないと決まるわけではありません。
重要なのは、何年経過したかだけではなく、現在のお口の状態です。
例えば、数年経っていてもインプラントを入れるための骨やスペースが十分残っている場合があります。
反対に、比較的短期間でも骨の吸収や歯の移動が進んでいるケースもあります。
そのため、
「2年だから大丈夫」「5年経ったからもう無理」というように、年数だけで判断することはできません。
レントゲンや必要に応じてCTなどで確認し、現在の骨の状態や周囲の歯、噛み合わせを調べたうえで治療方法を検討します。
長期間放置するとインプラントができなくなる?
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込む治療です。
そのため、インプラントを支えられるだけの骨が必要になります。奥歯を失ってから時間が経過し、顎の骨の吸収が進んでいる場合、そのままではインプラントを埋入するための骨が不足していることがあります。
ただし、骨が少ないからといって、必ずインプラントができないわけではありません。骨の不足している場所や程度によっては、骨造成などを行うことでインプラント治療を検討できる場合があります。
一方で、骨造成が必要になると、その分治療期間や身体的・経済的な負担が増える可能性があります。将来的にインプラントを選択肢として考えているのであれば、長期間そのままにせず、早めに骨の状態を確認しておくことをおすすめします。
抜けた奥歯を補う3つの治療方法
奥歯を失った場合、代表的な治療方法として「ブリッジ」「部分入れ歯」「インプラント」があります。
どの方法にもメリットと注意点があるため、単純にどれが一番優れているというものではありません。残っている歯や顎の骨の状態、欠損している場所、治療期間、費用などを踏まえて選択します。
ブリッジ
ブリッジは、抜けた部分の両隣にある歯を支えとして、橋をかけるように人工歯を装着する方法です。
固定式なので、自分で取り外す必要がありません。また、条件によっては保険診療で治療することもできます。
一方で、支えとなる歯を削る必要があります。特に両隣が治療されていない健康な歯の場合には、ブリッジのために歯を削ることになるため、慎重に検討する必要があります。
部分入れ歯
部分入れ歯は、失った部分に人工歯を入れ、残っている歯などを利用して固定する方法です。外科手術を必要とせず、幅広い症例で検討できます。保険診療の部分入れ歯もあるため、費用を抑えたい方にとっても選択肢になります。
一方で、取り外して清掃する必要があり、装着時の違和感や、固定する歯への負担が生じる場合があります。
インプラント
インプラントは、失った歯の部分の顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける方法です。ブリッジのように両隣の歯を削る必要がなく、部分入れ歯のように周囲の歯へバネをかける必要もありません。独立して噛む力を支えられることが大きな特徴です。
一方で、外科手術が必要となり、基本的には自由診療です。また、顎の骨の量や全身状態などによっては、そのまま治療を進められない場合があります。
特に奥歯が抜けた状態を長期間放置している場合には、CTなどを用いて顎の骨の状態を確認することが重要です。
奥歯が抜けたときはどの治療方法を選べばいい?
治療方法は「インプラントが一番」「入れ歯ならダメ」というように決めるものではありません。
例えば、両隣の歯がすでに被せ物になっている場合にはブリッジが適していることがあります。外科処置を避けたい方や、費用をできるだけ抑えたい方であれば、部分入れ歯を検討することもあります。
一方、健康な隣の歯をできるだけ削りたくない場合には、インプラントが選択肢になることがあります。大切なのは、現在残っている歯を含め、お口全体を見て治療方法を考えることです。
奥歯が抜けたまま痛くない場合も歯医者へ行った方がいい?
痛みがなくても、一度歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
奥歯を失った後に起こる歯の傾きや骨の吸収は、必ずしも痛みを伴うわけではありません。
むしろ、
「痛くない」
「普通に食事ができる」
「見た目も気にならない」
という状態だからこそ、何年も放置してしまうことがあります。
歯科医院を受診したからといって、必ずすぐにインプラントやブリッジなどの治療を始めなければならないわけではありません。
まずは現在の状態を調べ、今すぐ治療した方がよいのか、どのような治療方法が考えられるのかを確認するだけでも意味があります。
奥歯が抜けたままの状態についてよくある質問
奥歯が1本ないだけでも問題がありますか?
すぐに大きな問題が起こるとは限りませんが、隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びたりする可能性があります。抜けた場所や噛み合わせによって影響は異なるため、一度歯科医院で確認してもらうことをおすすめします。
奥歯が抜けて2年経っています。まだ治療できますか?
2年経過しているという理由だけで、治療できないとは限りません。骨の量や周囲の歯の位置などによって治療方法が変わるため、レントゲンやCTなどによる確認が必要です。
奥歯が抜けて5年以上経っています。インプラントはできますか?
長期間経過していてもインプラント治療が可能な場合はあります。ただし、顎の骨が痩せている場合には骨造成などの追加処置が必要になることがあります。
一番奥の歯が抜けても放置してはいけませんか?
一番奥の歯でも、噛み合う歯や手前の歯へ影響することがあります。ただし、歯の位置や噛み合わせによっては補わずに経過をみる場合もあるため、個別の診断が必要です。
抜けたままにしていた歯は自然に元へ戻りますか?
永久歯が抜けた場合、基本的に新しい永久歯が自然に生えてくることはありません。また、欠損によって傾いた歯や挺出した歯も自然に元の位置へ戻ることは期待できないため、必要に応じた治療を検討します。
まとめ|奥歯が抜けたままなら「痛くないから大丈夫」と考えず一度確認を
奥歯が抜けても、最初のうちはそれほど困らないことがあります。
そのため治療を後回しにしやすいのですが、時間が経つにつれて、隣の歯が傾く、噛み合う歯が伸びる、ほかの歯への負担が増える、顎の骨が痩せるといった変化が起こる可能性があります。
また、こうした変化の多くは、痛みを感じないまま進むことがあります。
すでに1年、2年、あるいはそれ以上放置してしまった方も、「今さら治療しても遅い」と決めつける必要はありません。
ブリッジ、部分入れ歯、インプラントなど、現在のお口の状態に応じて検討できる治療方法があります。
大切なのは、これまで何年放置していたかよりも、今のお口がどのような状態になっているかを確認することです。
奥歯が抜けたままになっている方は、これ以上周囲の歯や噛み合わせへ影響が広がる前に、一度歯科医院で相談してみましょう。