抜歯と同時にインプラントはできる?抜歯即時埋入の条件と注意点
「抜歯が必要と言われたけれど、その日にインプラントも入れられるの?」「抜歯とインプラントを別々に行うと、治療期間が長くなりそうで心配」このような方に検討される方法が、抜歯と同じ日にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入」です。
抜歯とインプラント埋入を1回の手術で行えるため、手術回数や治療期間を抑えられる可能性があります。一方で、顎の骨や歯ぐきの状態によっては適用できません。
この記事では、抜歯と同時にインプラントができる条件、メリット・デメリット、できないケース、治療の流れについて解説します。
インプラント治療全体の流れや費用、骨造成などについては、岡崎歯医者のインプラント治療もあわせてご覧ください。
抜歯と同時にインプラントを入れることはできる?
顎の骨や歯ぐきなどの条件が整っていれば、抜歯と同時にインプラントを埋め込むことができます。
この方法を「抜歯即時埋入」といいます。
一般的なインプラント治療では、抜歯後に歯ぐきや顎の骨が治るまで一定期間待ち、その後にインプラントを埋入します。
一方、抜歯即時埋入では、歯を抜いた部分にできる穴である「抜歯窩」を利用して、その日のうちにインプラントを埋め込みます。
ただし、抜歯する歯があるからといって、すべての方に行えるわけではありません。歯科用CTなどによる検査を行い、骨の量や形、感染の状態、インプラントを固定できるかどうかを確認する必要があります。
抜歯即時埋入と通常のインプラント治療の違い
インプラントを埋め込むタイミングは、大きく次のように分けられます。
| 埋入方法 | インプラントを入れる時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 抜歯即時埋入 | 抜歯と同じ日 | 手術回数や治療期間を抑えられる可能性がある |
| 早期埋入 | 抜歯後4~16週間程度 | 歯ぐきや骨の一部が治ってから埋入する |
| 待時埋入 | 抜歯後、骨が治癒してから | 骨や感染の状態を確認しやすい |
どの方法が適しているかは、治療する部位や骨の状態によって異なります。
抜歯即時埋入ができない場合でも、治癒を待ってからインプラントを入れることで、より適切な位置に埋入できるケースがあります。
「抜歯即時埋入」と「即時荷重」は別の治療
混同されやすいのが「抜歯即時埋入」と「即時荷重」です。
- 抜歯即時埋入:抜歯した日にインプラント体を埋め込む
- 即時荷重:インプラントを埋め込んだ当日または早期に、仮歯を装着して一定の力をかける
抜歯と同時にインプラントを入れられても、必ずその日に噛める歯が入るとは限りません。
インプラントの固定状態や噛み合わせによっては、歯ぐきの形を保つための仮歯を装着し、その部分では強く噛まないようにすることがあります。
また、奥歯など強い力がかかる部位では、インプラントと骨が結合するまで仮歯を装着しない場合もあります。
「手術当日にインプラントを入れられるか」と「当日から噛めるか」は分けて考えることが大切です。
抜歯と同時にインプラントができる主な条件
抜歯即時埋入を行うためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
インプラントを固定できる骨が残っている
インプラントは、埋入直後に顎の骨へしっかり固定されていることが重要です。これを「初期固定」といいます。
抜歯後の穴よりも深い部分や、内側に残っている骨を利用してインプラントを固定します。
骨が大きく失われている場合や、インプラントを支えられるだけの骨が残っていない場合は、抜歯即時埋入が難しくなります。
抜歯する部分の骨の形が保たれている
歯の周囲には、インプラントを支える骨があります。
特に前歯では、唇側の骨が薄かったり、すでに一部失われていたりすると、治療後に歯ぐきが下がる可能性があります。
抜歯する歯の周囲に骨がどの程度残っているかを、歯科用CTで立体的に確認します。
急性の炎症や感染が広がっていない
強い腫れや膿、急性の炎症がある場合には、先に感染の治療を行い、組織が落ち着いてからインプラントを埋入することがあります。
一方、慢性的な根の先の病変があるだけで、感染した組織を十分に取り除けることや、インプラントを固定できる骨が残っていることなどの条件を満たせば、抜歯即時埋入を検討できる場合もあります。
感染があるから一律にできない、あるいは必ずできるというものではありません。病変の範囲や骨の状態を含めた診断が必要です。
歯周病がある程度コントロールされている
歯周病による炎症や歯垢が多い状態では、インプラント周囲の感染リスクが高まります。
抜歯即時埋入を行う場合でも、残っている歯を含めて口腔内の清掃状態を整えることが大切です。
歯周病が進行している場合は、歯周病治療を優先することがあります。
全身状態が治療に適している
糖尿病、心疾患、骨粗しょう症などの治療状況や、服用している薬によっては、インプラント手術の方法や時期を慎重に検討する必要があります。
喫煙も傷の治りやインプラント周囲組織に影響する可能性があります。
持病や服用中の薬がある方は、自己判断で中断せず、診察時に歯科医師へ伝えてください。
治療後の通院とメインテナンスができる
抜歯即時埋入は、手術当日だけで治療が終わる方法ではありません。
インプラントと骨の結合、歯ぐきの治り、噛み合わせなどを継続して確認します。治療後も毎日のセルフケアと定期的なメインテナンスが必要です。
抜歯即時埋入が難しいケース
次のような場合は、抜歯と同時にインプラントを入れず、感染や骨の回復を待つことがあります。
- 抜歯する部分に急性の炎症や大きな感染がある
- 歯の周囲の骨が大きく失われている
- インプラントの初期固定を得られない
- 適切な位置や角度にインプラントを入れられない
- 歯ぐきが薄く、退縮するリスクが高い
- 重度の歯周病がコントロールされていない
- 口腔内の清掃状態が良くない
- 全身状態により外科手術を慎重に判断する必要がある
- 強い歯ぎしりや食いしばりへの対応が難しい
- 成長期で顎の発育が終わっていない
抜歯即時埋入ができないことは、インプラント治療そのものができないという意味ではありません。
抜歯後に骨や歯ぐきの治癒を待つ方法や、骨造成を組み合わせる方法などを検討します。
抜歯即時埋入のメリット
手術回数を減らせる可能性がある
通常は「抜歯」と「インプラント埋入」を別の日に行いますが、抜歯即時埋入では2つの処置を1回にまとめられます。
そのため、外科処置を受ける回数を減らせる可能性があります。
ただし、骨造成や歯ぐきの処置が必要な場合は、追加の手術を行うことがあります。
治療期間を短縮できる可能性がある
抜歯後の治癒期間を待たずにインプラントを埋め込むため、埋入までの待機期間を省けます。
ただし、インプラントと骨が結合するための期間は必要です。治療部位や骨の状態によっては、最終的な人工歯が入るまでの期間が大きく変わらないこともあります。
歯ぐきの形を維持しやすい
歯を抜くと、その周囲の骨や歯ぐきは少しずつ形が変化します。
抜歯と同時にインプラントや必要な骨補填材を適切に配置することで、抜歯後の組織の変化を抑えられる可能性があります。
特に前歯では、歯ぐきの形が見た目に影響するため、抜歯前から最終的な歯の形を考えた治療計画が重要です。
ただし、抜歯即時埋入を行えば骨や歯ぐきがまったく痩せないわけではありません。
歯ぐきの切開を抑えられる場合がある
抜歯した穴を利用してインプラントを入れられる場合は、歯ぐきを大きく切開せずに手術できることがあります。
切開範囲を抑えられれば、術後の腫れや痛みが比較的少なくなる可能性があります。
一方、骨造成や歯ぐきの移植が必要な場合は、切開を伴うことがあります。
仮歯で見た目に配慮できる場合がある
前歯では、条件が整っていれば手術当日に仮歯を装着できることがあります。
ただし、この仮歯は見た目や歯ぐきの形を整える目的が中心で、強く噛むための歯ではない場合があります。
インプラントに過度な力が加わらないよう、仮歯の噛み合わせを調整します。
治療中の仮歯や歯がない期間については、「インプラント治療中に歯がない期間はある?」で詳しく解説しています。
抜歯即時埋入のデメリットと注意点
誰にでも行えるわけではない
抜歯即時埋入は、骨や歯ぐきなどの条件を慎重に選ぶ必要がある治療です。
抜歯をして初めて骨の欠損や歯根周囲の状態が分かり、予定していた即時埋入を中止することもあります。
その場合に備えて、通常埋入へ変更する可能性についても事前に確認しておきましょう。
治療には精密な診査と技術が必要
抜歯窩は、インプラントと同じ形ではありません。
残っている骨を利用しながら、将来の人工歯に適した位置へインプラントを入れる必要があります。
特に前歯の抜歯即時埋入は、骨や歯ぐきの厚み、インプラントの三次元的な位置、仮歯の形などを細かく検討する必要があります。国際的なコンセンサスでも、適応条件を慎重に選び、経験を有する歯科医師が行う複雑な治療として位置づけられています。
骨造成が必要になることがある
抜歯した穴とインプラントとの間に隙間ができる場合は、骨補填材などを用いた処置を行うことがあります。
抜歯と同時にインプラントを入れられたとしても、骨造成が不要とは限りません。
骨造成の有無によって、費用や治療期間、術後の腫れなどが変わる可能性があります。
歯ぐきが下がることがある
抜歯後は骨や歯ぐきが変化します。
特に前歯では、歯ぐきが下がるとインプラントの金属部分が透けたり、隣の歯との境目が目立ったりすることがあります。
歯ぐきが薄い場合には、結合組織移植などを併用することもあります。
インプラントが骨と結合しない可能性がある
通常のインプラント治療と同様に、抜歯即時埋入でもインプラントが骨と十分に結合しない可能性があります。
感染、喫煙、清掃状態、過度な噛む力、全身状態など、複数の要因が影響します。
骨との結合が得られない場合は、インプラントを撤去し、治癒を待ってから再治療を検討することがあります。
抜歯即時埋入の治療の流れ
1.診察・カウンセリング
抜歯が必要になった理由や現在の症状、インプラント以外の治療方法について確認します。
インプラントだけでなく、ブリッジや入れ歯、歯を保存できる可能性も含めて検討することが大切です。
2.レントゲン・歯科用CTによる検査
歯科用CTなどを使用して、次のような点を確認します。
- 抜歯する歯の根の形
- 感染や骨吸収の範囲
- 顎の骨の高さ・幅・厚み
- 神経や上顎洞との位置関係
- インプラントを固定できる骨の有無
- インプラントを入れる位置や角度
必要に応じて口腔内スキャンや型取り、噛み合わせの検査も行います。
3.事前の歯周病治療・クリーニング
歯垢や歯石、歯周病による炎症がある場合は、手術前に口腔内環境を整えます。
感染の状態によっては、先に根の治療や消炎処置を行うこともあります。
4.抜歯とインプラント埋入
周囲の骨や歯ぐきをできるだけ傷つけないように抜歯します。
抜歯窩の内部に感染した組織があれば丁寧に取り除き、予定した位置にインプラントを埋入します。
必要に応じて、骨補填材やメンブレン、歯ぐきの移植を併用します。
5.仮歯の装着または傷口の保護
インプラントの固定状態や治療部位に応じて、仮歯を装着する場合があります。
初期固定が十分でない場合や奥歯で強い力がかかる場合は、無理に仮歯を入れず、インプラントを歯ぐきの下で治癒させます。
6.インプラントと骨の結合を待つ
治療部位や骨の状態に応じて、インプラントと骨が結合するまで待ちます。
この期間は、仮歯を強く噛まないことや、手術部位を清潔に保つことが大切です。
7.最終的な人工歯を装着
インプラントの安定を確認した後、型取りまたは口腔内スキャンを行い、最終的な人工歯を製作します。
装着後は、噛み合わせや清掃のしやすさを確認します。
8.定期的なメインテナンス
インプラントはむし歯にはなりませんが、周囲に炎症が起こる「インプラント周囲炎」には注意が必要です。
定期検診では、歯ぐきの状態、噛み合わせ、磨き残し、人工歯やネジの状態などを確認します。
抜歯即時埋入後に気をつけること
手術後は、歯科医師から受けた指示に従って過ごしてください。
一般的には、次のような点に注意します。
インプラント手術後の痛みは、通常、時間の経過とともに少しずつ落ち着いていきます。ただし、痛みが強くなっている場合や、腫れ、出血、膿などが続く場合は、早めに歯科医院へご連絡ください。
- 手術部位を舌や指で触らない
- 当日は強いうがいを繰り返さない
- 処方された薬を指示どおり服用する
- 傷口が落ち着くまで硬い物や刺激物を避ける
- 飲酒、激しい運動、長時間の入浴を控える
- 喫煙を控える
- 仮歯で硬い物を噛まない
- 自己判断で通院を中断しない
出血が止まらない、腫れや痛みが強くなっている、仮歯やインプラント部分が動くなどの変化がある場合は、早めに歯科医院へ連絡しましょう。
抜歯即時埋入の費用
抜歯即時埋入を含むインプラント治療は、原則として自由診療です。
費用には、次のような項目が含まれる場合があります。
- 診察・検査・歯科用CT
- 抜歯
- インプラント埋入手術
- インプラント体
- アバットメント
- 仮歯
- 最終的な人工歯
- 骨造成
- 歯ぐきの移植
- サージカルガイド
- 術後の診察・メインテナンス
表示されている金額にどこまで含まれているかは、歯科医院によって異なります。
治療を受ける前に、追加処置が必要になった場合の費用も含めて確認しておきましょう。
抜歯即時埋入についてよくある質問
抜歯と同時にインプラントを入れると痛いですか?
手術中は局所麻酔を使用するため、通常は痛みを抑えながら処置を進めます。
手術後は、腫れや痛み、出血が出ることがあります。程度には個人差があり、抜歯の難しさや骨造成の有無によっても異なります。
前歯でも抜歯即時埋入はできますか?
条件が整っていれば可能です。
ただし、前歯は歯ぐきの形や厚みが見た目に影響しやすいため、より慎重な診断が必要です。骨の状態によっては、抜歯後に一定期間待つ方法のほうが適している場合があります。
奥歯でもできますか?
奥歯でも行える場合があります。
一方、奥歯は複数の歯根があることや、強い噛む力がかかることから、インプラントを固定できる骨があるかを慎重に確認します。
歯周病で抜歯する場合も同時にインプラントを入れられますか?
歯周病による骨の欠損が小さく、感染組織を除去でき、インプラントを固定できる場合は検討できます。
骨が大きく失われている場合や炎症をコントロールできていない場合は、歯周病治療や骨造成を先に行うことがあります。
膿があっても抜歯即時埋入はできますか?
膿や強い腫れを伴う急性炎症がある場合は、感染の治療を優先することがあります。
慢性的な病変では、病変の範囲や残っている骨の状態によって判断が異なります。診察と歯科用CTによる確認が必要です。
抜歯した日に仮歯は入りますか?
インプラントの初期固定や噛み合わせなどの条件が整えば、仮歯を装着できることがあります。
ただし、仮歯が入っても、その部分で通常どおり噛めるとは限りません。治癒期間中は噛む力をかけないように調整する場合があります。
抜歯即時埋入なら治療期間はどれくらい短くなりますか?
抜歯後からインプラント埋入までの待機期間を省けるため、治療期間を短縮できる可能性があります。
ただし、骨との結合を待つ期間や骨造成の有無によって異なるため、一律に何か月短くなるとはいえません。
インプラント治療全体の期間や、骨と結合するまでの待機期間については、インプラントの治療期間は?完成までの流れを解説もご覧ください。
抜歯即時埋入の成功率は通常の方法より低いですか?
適切な条件を満たした症例では、良好な治療結果が報告されています。
一方、研究の多くは厳しい適応基準を満たした症例を対象としています。すべての患者さんに同じ結果が当てはまるわけではなく、適応の見極めが重要です。
抜歯と同時にインプラントができるかは検査で判断します
抜歯と同時にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入」は、手術回数や治療期間を抑えられる可能性がある治療方法です。
ただし、次の条件を確認する必要があります。
- インプラントを固定できる骨が残っている
- 骨や歯ぐきの形が治療に適している
- 急性の感染が広がっていない
- 歯周病や口腔内環境がコントロールされている
- 全身状態に大きな問題がない
- 治療後の通院とメインテナンスができる
無理に抜歯即時埋入を選ぶことが、良い結果につながるとは限りません。
まずは歯を残せる可能性を確認し、抜歯が必要な場合には、歯科用CTなどの検査結果をもとに、抜歯即時埋入と通常埋入のどちらが適しているかを検討します。
抜歯が必要と言われた方や、治療中に歯がない期間をできるだけ短くしたい方は、抜歯をする前にインプラント治療に対応している歯科医院へ相談しましょう。