岡崎市にお住まいの皆様、こんにちは。 「岡崎歯医者」院長の、高田裕史(たかだ ひろし)です。
毎日多くの患者様がいらっしゃいますが、初診のカウンセリングでよく耳にする「不安の声」があります。
「内科で骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の薬を飲んでいるんですが、歯の治療はできないと言われました」
「『アゴの骨が腐る病気』になると聞いて、怖くて歯医者に行けません」
もし、この記事を読んでいるあなたが、あるいはあなたのご家族が同じような不安をお持ちだとしたら、まずは深呼吸をして安心してください。
歯科医療の常識は、ここ数年で大きく変わりました。 「骨の薬を飲んでいるから、歯医者に行けない」というのは、過去の誤解になりつつあります。
今回は、2023年に発表されたばかりの最新の医療指針『薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023』の内容に基づき、「骨粗鬆症のお薬を服用中の方でも、安心して歯科治療を受けていただける理由」について、全3回に分けて詳しくお話しします。
第1回目は、そもそも何が心配されているのか、そして最新のガイドラインがどう変わったのか、その基礎知識編です。
1. 「アゴの骨の病気」の正体とは?
まず、皆様が心配されている病気について正しく理解しましょう。 専門用語では「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)」と呼ばれています。
これは、骨を強くするお薬(ビスホスホネート製剤やデノスマブなど)を使用している方に、ごく稀に発生する症状です。
抜歯などの外科処置を受けた後、顎骨壊死が顕在化、骨が露出したり感染を起こしたりする状態を指します。
「骨が壊死する」という言葉の響きは非常に怖いですよね。 しかし、ここで強調しておきたいのは、この病気の発症率は「極めて低い」という事実です。
最新のポジションペーパー(2023年版)のデータによれば、骨粗鬆症の治療で経口薬(飲み薬)を服用している患者様において、この症状が出る確率は「10万人に1人 ~ 10万人あたり69人程度(0.001%〜0.069%)」と報告されています。
これは、交通事故に遭う確率よりもはるかに低い数字です。
「万が一」のリスクを知ることは大切ですが、そのリスクを過大に恐れて、必要な歯科治療を我慢してしまうことの方が、実はお口と全身の健康にとって大きなマイナスになってしまうのです。
2. 2023年、歯科の常識が変わりました
これまで、私たち歯科医師と患者様を悩ませてきたのが、「抜歯をするなら、骨の薬をしばらく休んでください(休薬)」という古いルールでした。
「歯を抜きたいけれど、薬を止めると骨折が心配」
「整形外科の先生には薬を止めるなと言われた」
このように、板挟みになって困ってしまった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この状況は一変しました。専門家たちが膨大な研究データを再検証した結果、以下のような見解が示されたのです。
「骨粗鬆症治療薬を休薬しても、顎骨壊死の予防効果があるという明らかな証拠はない」
「むしろ、休薬することによる骨折のリスク(生命予後への影響)を考慮すべきである」
つまり、現在の最新スタンダードでは、「原則として、お薬を飲み続けたままで歯科治療を行う」という方針に大きく舵が切られました。
岡崎歯医者では、この最新の指針を遵守しています。 「薬を止めてください」と安易にお願いすることはありません。
お薬を続けたままでも安全に治療ができるよう、徹底した「感染対策」を行うことこそが、私たち歯科医師の役割だと考えているからです。
3. あなたが飲んでいるお薬はどれですか?
「私は大丈夫かしら?」と思われた方へ。 注意が必要なお薬には、いくつかの種類があります。
整形外科や内科で以下のようなお薬を処方されていないか、お薬手帳を確認してみてください。
① ビスホスホネート製剤(BP製剤)
- 飲み薬:ボナロン、フォサマック、アクトネル、ベネット など
- 注射薬:ボンビバ など
② デノスマブ製剤
- 注射薬:プラリア、ランマーク など
これらは、骨折を防ぎ、寝たきりを防ぐための非常に大切なお薬です。 以前は「これらの薬=歯医者NG」と思われがちでしたが、今は違います。「これらの薬=歯医者としっかり連携して守っていくべき方」なのです。
4. 岡崎歯医者が行う「徹底した安全管理」
お薬を止めずに治療を行うためには、条件があります。それは「お口の中を清潔に保つこと」です。
顎骨壊死の最大のリスク因子は、薬そのものではなく、実はお口の中の「細菌感染」です。
歯周病で歯ぐきが腫れていたり、歯の根っこに膿が溜まったりしている状態こそが、最も危険なのです。
そこで、当院では以下のステップで皆様の安全を守ります。
- 詳細な問診(カウンセリング): どのお薬を、いつから、どれくらいの期間使っているかを詳しくお聞きします。お薬手帳を必ずお持ちください。
- 徹底的な歯周病ケア: 抜歯などの外科処置が必要になる前に、まずはお口の中の細菌を減らします。プロによるクリーニングで、リスクを最小限に抑えます。
- 医科との連携: 必要に応じて、処方元の主治医(整形外科や内科の先生)にお手紙を書き、現在の病状やお薬の状況を共有します。勝手な判断はせず、チーム医療であなたを支えます。
5. 「これからお薬を飲む」という方へ
もし、これから骨粗鬆症の治療や、がんの骨転移の治療を始める予定がある方は、お薬を飲み始める前にぜひ一度、当院へお越しください。
ポジションペーパーでも、「薬剤開始前の歯科検診と予防的治療」が最も有効な対策であると強く推奨されています。
お薬が体に入る前に、グラグラの歯を治したり、合わない入れ歯を調整したりすることで、将来のリスクをほぼゼロに近づけることができます。
「内科の先生に薬を勧められたから、その前に歯医者に行っておこう」
岡崎でそんな賢い選択をする方が増えることを、私は願っています。
まとめ:次回は「抜歯」についてお話しします
今回は、骨のお薬を飲んでいる方でも、最新の知識と管理があれば怖がる必要はない、ということをお伝えしました。
「リスクが低いのはわかったけど、やっぱり歯を抜くのは怖い」 「実際にどんな治療をするの?」
そんな疑問にお答えするため、次回のブログ(第2回)では、最も質問の多い「お薬服用中の抜歯(歯を抜くこと)」にフォーカスを当てます。
「抜くしかないと言われたけれど、どうしよう」と悩んでいる方には、きっと希望の持てる内容になるはずです。
岡崎歯医者は、あなたの「骨の健康」と「お口の健康」、その両方を守るパートナーでありたいと考えています。 不安なことがあれば、いつでもご相談ください。