「岡崎歯医者」院長の、高田裕史(たかだ ひろし)です。
全3回でお届けしてきた「骨粗鬆症のお薬と歯科治療」シリーズも、今回が最終回です。
第1回では「お薬を止めなくていい理由」を。 第2回では「安全な抜歯の方法」を解説しました。
そして今回お話しするのは、皆様に一番知っていただきたいこと。 それは、痛い治療や怖い手術を避けるための「予防」についてです。
最新の『ポジションペーパー2023』には、非常に重要なメッセージが記されています。 それは、「口腔衛生状態の改善(お口をきれいにすること)が、顎骨壊死の予防に最も有効である」という事実です。
今日からできる、あなたの骨と歯を守る「最強の習慣」をお持ち帰りください。
1. 「お口の汚れ」が骨を溶かすスイッチになる
なぜ、骨粗鬆症のお薬を飲んでいると、お口のケアが重要になるのでしょうか?
お口の中には、数億個もの細菌が住んでいます。 通常、私たちの体の免疫力が細菌の侵入を防いでいますが、歯周病で歯茎が出血していたり、入れ歯が合わなくて傷ができていたりすると、そこが細菌の「入り口」になります。
骨粗鬆症のお薬(BP製剤など)は、骨の代謝(生まれ変わり)を緩やかにする作用があります。そこに細菌が侵入して骨に炎症が起きると、古い骨をうまく処理できず、骨が腐ってしまう(壊死)……これがMRONJのメカニズムの一つと考えられています。
つまり、「細菌の入り口を作らない(傷を作らない)」ことと、「細菌そのものを減らす(清潔にする)」ことこそが、最大にして唯一の予防策なのです。
2. 定期検診は「お掃除」だけではありません
「歯医者の定期検診なんて、歯石を取るだけでしょ?」 もしそう思われているなら、それは大きな誤解です。
骨のお薬を服用中の方に対する当院の検診は、「顎骨壊死の兆候がないか」をチェックする、専門的な医療行為(医学的管理)です。
- 粘膜のチェック: 歯茎の骨が透けて見えていないか、小さな傷がないかを確認します。
- 入れ歯のチェック: 合わない入れ歯が骨を圧迫していないか、当たりを確認・調整します。
- 動揺のチェック: 歯がグラグラしていないか、感染の兆候がないかを確認します。
ポジションペーパーでも、「定期的な歯科検診による口腔衛生管理」が強く推奨されています。
ご自身では気づけない「小さな異変」を、私たちが早期に発見し、ボヤのうちに火を消し止めます。
3. 整形外科や内科の先生との「連携プレー」
当院が大切にしているのが、お薬を処方している医科の先生との連携です。
もし、あなたがこれから骨粗鬆症の治療を始める、あるいはがんの骨転移の治療を始めるという段階であれば、ぜひ「お薬が始まる前」に当院へお越しください。
「これから治療が始まるので、口の中をチェックしてほしい」 そう伝えていただければ、私たちは全力で感染源(悪い歯や歯石)を除去します。
お薬が体内に入る前に、お口の中を「安全な状態」にリセットしておくこと。これが、将来のリスクを下げる最も賢い方法です。
もちろん、すでに服用中の方でも遅くはありません。
「今、骨の薬を飲んでいます」と教えていただければ、その日からあなた専用の管理プログラムがスタートします。
4. 日常生活で気をつけてほしい「3つの約束」
最後に、ご自宅で守っていただきたいポイントをお伝えします。
- 「痛くない」歯こそ丁寧に磨く 痛い歯は誰でも気にしますが、怖いのは痛みのない歯周病です。歯と歯茎の境目を意識して、優しく丁寧に磨いてください。
- 入れ歯は毎日洗う 入れ歯の汚れは、そのまま骨への感染リスクになります。毎日ブラシで洗い、寝る時は洗浄剤につけて休めてください。
- 異変を感じたら、予約日が先でもすぐに連絡 「歯茎から骨っぽいものが見える」「歯茎が腫れて痛い」「歯が急に揺れてきた」 こんな時は、次の検診を待たずにすぐにご連絡ください。早期発見なら、お薬や洗浄だけで治ることがほとんどです。
シリーズまとめ:怖がらず、正しく付き合う
全3回にわたりお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
骨粗鬆症のお薬は、あなたの骨折を防ぎ、健康寿命を延ばすための「味方」です。
そして私たち歯科医師も、あなたがお薬の恩恵を安心して受けられるようサポートする「味方」です。
「アゴが腐るのが怖いから」と歯の治療を我慢したりする必要はもうありません。
岡崎歯医者は、最新のガイドラインに基づいた正しい知識と技術で、岡崎の皆様の「噛める喜び」と「歩ける幸せ」の両方を守ります。
お薬手帳を持って、ぜひお気軽に検診にいらしてください。 スタッフ一同、心よりお待ちしております。
監修: 岡崎歯医者(インプラントクリニック岡崎)
院長 高田裕史 (本記事シリーズの内容は『薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023』に基づいています)