1. 治療中に気分が悪くなるのは「心が弱い」から?
歯科治療中に、ふと気が遠くなったり、冷や汗が出たり、気持ち悪くなってしまったりしたことはありませんか?
これらは、専門用語で「血管迷走神経反射(けっかんめいそうしんけいはんしゃ)」と呼ばれる現象であることがほとんどです。
名前は難しいですが、これは病気ではありません。 熱いお風呂に長く入りすぎてのぼせたり、朝礼で長時間立っていてクラッとしたりするのと同じ、体の防御反応の一つです。
日本歯科麻酔学会のガイドラインでも、歯科治療における全身的偶発症の中で最も頻度が高いものとして取り上げられています。
つまり、あなただけでなく、非常に多くの方が経験していることなのです。
どのようなメカニズムで起こるの?
通常、私たちは緊張すると交感神経(アクセル)が働きますが、過度な緊張や痛み、「怖い」という感情が高まると、体が「リラックスしなさい!」と強制的に副交感神経(ブレーキ)を強く踏み込んでしまうことがあります。
すると、急激に脈がゆっくりになり、血管が広がって血圧が下がります。その結果、脳に運ばれる血液が一瞬少なくなり、「クラッ」とする症状が出るのです。
これは、脳を守るために体が「横になって血液を巡らせて!」と指令を出しているサインです。
決してあなたの心が弱いからでも、体質に問題があるからでもありません。
2. 「安全な治療」のために、私たちが知ってほしいこと
この「血管迷走神経反射」は、誰にでも起こりうる生理的な反応ですが、事前にいくつかの対策をとることで、発生を未然に防いだり、症状を軽くしたりすることができます。
岡崎歯医者へお越しになる際には、ぜひ以下の3点を意識してみてください。
① 寝不足や空腹を避ける
睡眠不足や極度の空腹状態は、自律神経のバランスを乱れさせます。「麻酔をするから食事を抜いてきた」という方がいらっしゃいますが、逆効果になることがあります。軽く食事を済ませ、体調を整えてご来院ください。
② 我慢は禁物、「痛い」はすぐに伝える
「大人が痛いと言うのは恥ずかしい」と我慢してしまうと、そのストレスが反射の引き金になります。
当院では麻酔の痛みを減らす工夫をしていますが、もし痛みを感じたら遠慮なく左手を挙げてください。すぐに麻酔を追加したり、休憩を挟んだりします。
③ 既往歴や服用薬を教えてください
高血圧のお薬を飲んでいる方や、過去に気分が悪くなったことがある方は、問診票に必ずご記入ください。
事前に分かっていれば、より慎重にモニタリングを行うことができます。
3. 岡崎歯医者が実践する「リラックス診療体制」
当院では、院長の私、高田をはじめスタッフ全員が、日本歯科麻酔学会のガイドラインに基づいた対応トレーニングを受けています。
皆様に「ここなら安心」と思っていただけるよう、以下のような取り組みを行っています。
水平位診療(すいへいいしんりょう)の徹底
ガイドラインには、血管迷走神経反射の予防として「水平位(体を横にした状態)での治療」が有効であると記載されています。
座ったままよりも、寝かせた状態の方が脳への血流が安定するためです。
当院の診療チェアは、患者様が最もリラックスでき、かつ生理学的にも安全な角度に設定できるよう調整しています。
「美容院のシャンプー台」のような感覚で、ゆったりとお過ごしください。
「生体モニター」による見守り
高血圧や心疾患をお持ちの方、あるいは極度の歯科恐怖症の方には、指先に「パルスオキシメーター」や血圧計を装着させていただくことがあります。
これにより、脈拍や酸素飽和度をリアルタイムで数値化し、患者様ご自身が気分の変化を感じる前に、私たちが体調の変化を察知できる体制を整えています。
声かけとコミュニケーション
最も強力な予防薬は「安心感」です。
「これから椅子が倒れますよ」 「麻酔のお薬が入ります、少し押される感じがしますよ」
このように、次に何をするかを必ずお声がけします。 見えない口の中を触られる恐怖を、言葉によるコミュニケーションで取り除いていきます。
4. 万が一、気分が悪くなったら?
どれほど対策をしていても、その日の体調によっては気分が悪くなることもあります。
しかし、どうぞご安心ください。
もし治療中に「あ、なんだか変だな」と感じたら、すぐに教えてください。 ガイドラインに準拠し、迅速に以下の対応を行います。
- 治療の中断: すぐに処置を止め、お口の中の器具を取り出します。
- 体位の調整: チェアをフラットにし、足を少し高くする(下肢挙上)ことで、脳への血流を回復させます。
- バイタルチェック: 血圧や脈拍を確認し、正常に戻るまでゆっくり休んでいただきます。
血管迷走神経反射の場合、多くは横になって休むだけですぐに回復します。後遺症が残るような怖いものではありません。
当院では、患者様が完全に回復され、顔色が戻り、ふらつきがなくご帰宅できるまで、時間を気にせず休んでいただけるスペースと体制を確保しています。
5. 院長・高田裕史より岡崎の皆様へ
歯科治療は、ミクロン単位の細かな作業の連続です。 しかし、私たちが診ているのは「歯」だけではありません。治療を受けている「患者様そのもの」です。
「痛くされたらどうしよう」 「何をされるか分からない」
そんな不安な気持ちを抱えたままでは、素晴らしい治療結果は生まれません。 だからこそ、岡崎歯医者では「心の安全」も治療の一部だと考えています。
「昔、歯医者で倒れたことがあるから行きづらい」 そんなトラウマをお持ちの方こそ、ぜひ当院にご相談ください。
「今日は話を聞くだけ」「検査だけ」というステップから始めることも可能です。
私たちは、無理に治療を進めることは決してありません。 あなたのペースに合わせて、一番安全で、一番安心できる方法を一緒に考えていきましょう。
美味しいものを食べ、笑顔で過ごす毎日のために。
まずは、あなたの「不安」を私たちにお聞かせください。 スタッフ一同、温かくお迎えいたします。
監修: 岡崎歯医者(インプラントクリニック岡崎) 院長 高田裕史
記事内の対応方針は『歯科治療中の血管迷走神経反射に対する処置ガイドライン』等の医学的根拠に基づいています